接触安全機構を持った自律分散型モジュールロボット

ロボットが誕生して以来我々の生活は大きく変化しました。主に産業用ロボットは古くから実用化されており、作業を効率化するのに大きく貢献してきました。近年では、産業だけではなく家庭内や施設などにロボットを導入しようとする動きが活発に行われています。
しかし、ロボットが利用されるようになってから、駆動しているロボットが人を巻き込むことで起こってしまう事故は後を絶ちません。そのような事故が起きてしまうことにより、人々がロボットを導入することに抵抗感を持ってしまいます。また、ロボットは近年になって急速に普及し始めているため、大多数の人々はロボットと触れ合う機会に恵まれておらず、ロボットがどのような物なのか知ることができないまま、漠然とした抵抗感を持ってしまうという状況が続いています。

 

有人支援モジュール型マニピュレータ

木村研究室では、これまでに宇宙ステーション内で宇宙飛行士のルーチン作業を代行する有人支援ロボットとして、作業用モジュール型マニピュレータを開発してきました。これは、宇宙飛行士が誤ってマニピュレータに接触してしまった場合、ロボット自身が自己分解し人間の安全を確保する、というコンセプトの元開発されたものであります。(Fig.1)さらに、モジュール一つ一つにCPUを搭載し、故障にも強いシステムにするため、それぞれが自律的に考え全体としての動きを制御する自律分散制御を導入しており、故障してしまった場合にもモジュールを交換するだけで対応できます。さらに各モジュールが同一のものなのでロボットを組み替えることも可能です。(Fig.2)

Fig。1接触に対して分離するマニピュレータ    Fig。2モジュール型ロボットの構成変更

   Fig.1 接触に対して分離するマニピュレータ     Fig.2 モジュール型ロボットの構成変更

 

クロスギアユニバーサルジョイント

関節部分には我々が開発したクロスギアユニバーサルジョイントという新しい機構が採用されています。この機構の特徴は1点2自由度を実現できることです。Fig3に示すような直行したギアを中心の関節部に設けることによって、関節の両端のアーム1・アーム2はクロスギアに対して互いに直行した回転軸となる軸1・軸2を持つことになり、小型のモジュール内に2自由度を実現しています。クロスギアはモーターからウォームギアによって動力が伝達されます。ウォームギアの回転はギアに伝えることができるがギアを動かすことでウォームギアを動かすことはできないので、この機構によりモーターに電流が流れていない場合にもその角度を保持することができます。

Fig3有人支援マニピュレータ  Fig4分離結合機構

    Fig.3 有人支援マニピュレータ            Fig.4 分離結合機構

Fig。5クロスギアユニバーサルジョイント

Fig.5 クロスギアユニバーサルジョイント

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Fig.6 ラックギアとクロスギアの比較

Fig.6の左右の画像の緑丸で囲まれた部分と赤丸で囲まれた部分がそれぞれ対応しています。左画像の緑丸部分を「ラックギア」、右画像の緑丸部分を「クロスギア」、左右の画像の赤丸部分を「駆動ギア」と呼びます。駆動ギアがクロスギアを自走していくことで駆動ギア側のリンクを動かします。

 

接触安全機構を持ったモジュール型玩具

これまで開発を行ってきた作業用モジュール型マニピュレータの知見を元に、ロボット導入に対する抵抗感を軽減する、新しい玩具用モジュール型ロボットを開発しています。そしてそれを人が多く生活している場所、例えば教育現場や家庭に広めることで、
ロボットと人触れ合える機会を与えていきたいと考えています。

Fig7 リンクモジュール外観  Fig8 関節モジュール外観

         Fig.7 リンクモジュール外観         Fig.8 関節モジュール外観

Fig9 モジュールロボット結合図  Fig10 玩具用分離結合機構

         Fig9 モジュールロボット結合図       Fig10 玩具用分離結合機構