FMEAシートを基にした衛星搭載ソフトウエアの自動生成システムの概要

System Concept

近年小型衛星の多機能化により、小型衛星や小型衛星に搭載される各機器のシステムへの要求が複雑になってきています。衛星や搭載機器の高機能化や複雑化によって不具合や故障モードの種類は増大する傾向にあり、衛星が地上と通信できる時間は限られているため、地上と通信できない多くの時間は衛星自身で不具合や故障モードに対応しなくてはいけません。 衛星が自身で不具合や故障モードに対応するためには、それらの対応と密接な関係がある搭載ソフトウエアが適切に構成されている必要があります。しかし、不具合や故障モードに対応するソフトウエアを正確かつ不具合・故障モードの抜けが無いように構築するのは困難な作業となります。

そこで故障モードに対応したソフトウエアを自動生成させることにより効率よくソフトウエアを構築させるシステムを考案しました。まずソフトウエアとは別にシステム内の要素単位の故障と、それらの組合せをFMEAを基に作成したシートに定義し、その定義書の内容からソフトウエアを生成します。このシートの特徴としては、故障モードの内容を日本語で記述できるという点です。日本語による記述は複雑な故障モードでも容易にまとめることができ、作業の効率を上げることができます。

 

ソフトウエア生成システムの流れ

ソフトウエア生成システムの流れ

 

FMEA

FMEA(Failure Mode and Effect Analysis)とは故障モード及び影響解析の略称のことで、設計の不完全な点や製品・システムの潜在的な欠点を見出すために、構成要素の故障モードを摘出し、その上位コンポーネント及びシステムへの影響を解析する技法のことです。

FMEAはその分析方法が”bottom up”方式であるといわれているように、システムの部品・部位の故障モード(failure mode)を取り上げ、一つずつ、これが上位レベルへ及ぼす影響(effect)を評価・分析(analysis)するところに、この方法の特徴があります。システム全体の故障モードがその下位レベルでの不具合や故障モードの組み合わせから発生するという観点から故障モードを定義するためのシートとしてFMEAの考え方を取り入れました。

FMEA

FMEA

 

故障定義・組合せ定義に用いるFMEAシート

従来設計者による設計のためのツールとして使用されてきたFMEAを故障モードに対応したソフトウエアを構築するための支援ツールとして利用することにより、複雑化した故障モードを把握しやすく整理できます。また、故障モード内容を日本語で記述できるので一目でどのようなことが起きるのか理解することができます。日本語での入力は新しい故障モードが発覚しても迅速にシートに追加することができます。

FMEAシート

FMEAシート2

FMEAシート

 

サポートアプリケーション

FMEAシートの評価欄を文字の情報のみで構築することは、容易な組み合わせならまだしも、複雑な組み合わせになればなるほど難しくなってしまいます。これを解消するためにFMEAシートの故障情報を可視化するアプリケーションを開発しました。 このアプリケーションではまずFMEAシートの故障ステータスを参照し、ANDやORゲートに繋いで論理的にモデル化します。完成した論理モデル上の相互関係を、そのまま評価式として生成し、アプリケーションを通して直接FMEAシートに記入することができます。また逆に評価式から図を生成することも可能です。

サポートアプリケーション

サポートアプリケーション