近年通信衛星、気象・地球観測衛星など様々な種類の人工衛星の開発に伴い人工衛星に求められる要求が多様化してきています。またその要求に対応するために衛星搭載用計算機も様々なものが使用されています。その一方で衛星は打ち上げてしまうと修理が困難なため計算機のハードウェアに対する信頼度はもちろんのことソフトウェアに対する信頼度も重要になってきています。
一般的にソフトウェアは繰り返し利用によるフィードバックを得ることにより信頼度が向上していきます。しかし、現状計算機や搭載機器はミッションに応じて各開発機関で個別に開発されていることがほとんどです。また、それに合わせて搭載ソフトウェアやそれを開発・検証するためのシステムも個々の衛星に特化したものになってしまっています。そのため搭載ソフトウェアはもちろん検証するシステム自体の信頼度も非常に低いものとなっています。しかし、これらには機能ごとに分解していくと個々の装置とのインターフェースなど共通な部分が多く存在します。そこで私たちはこれらの共通部分をモジュールとして製作することで再利用性を高め、信頼性の向上を目指しています。
私たちはこのモジュール化という手法を利用・応用することで「小型衛星における姿勢制御系ソフトウェアのモジュール化」や「衛星搭載ソフトウェア検証プラットフォームの構築」などを行っています。
小型衛星における姿勢制御系ソフトウェアのモジュール化
本研究室では、実際に打ち上げられた小型衛星の姿勢制御系ソフトウェアに関して、考察を行い、適切なレベルのモジュール化を検討しています。この適切なモジュール化により、搭載ハードウェアやミッションの大きく異なる衛星に対してもモジュールの再利用や交換・追加という必要最小限の変更で対応できる再利用性の高い姿勢制御系ソフトウェアの実現を目指しています。
再利用性を考慮したモジュール化
衛星搭載ソフトウェア検証プラットフォームの構築
ソフトウェアを検証するためのシステムを毎回個別開発していては検証環境自体の信頼度は上がっていかず、ソフトウェアの信頼性にも影響が出ることが考えられます。
しかし上記に述べたように、これらのシステムには要素に分解すると互いに共通する部分も多く存在します。この様に多くの衛星に存在する共通部分を基本システムとして構築することで衛星の違いをカバーできるようになります。そして、衛星やミッションの違いを超えて多くの衛星開発に共通のシステムを使用することが出来れば相互に改良や機能の追加、情報共有などを行うことができ、生産性と信頼性の向上をもたらすことが出来ます。
現状の衛星開発 衛星開発の理想形
そこで我々はモジュール化という手法を応用し、衛星やミッションの枠を超えて利用可能なソフトウェア検証プラットフォームを構築し、各機関に提供し広く利用してもらうことで、ソフトウェアの信頼性と開発効率を上げることを考えています。
本プラットフォームのシステムの一部であるHILS(※)システムは2014年6月に打ち上げられたほどよし3号機、12月に打ち上げられたPROCYONの開発に実際に使用されました。
今後も多くの衛星開発で使用し、ソフトウェアの資産化を行っていくことでソフトウェアの信頼性と開発効率の向上に繋がると考えます。
プラットフォームの理想形
(※)HILS:Hardware In the Loop Simulationのこと。
衛星の制御ソフトウェアの信頼度を向上させるためには衛星の開発段階に合わせて適切な検証を行うことが重要です。
その中でも、Hardware In the Loop Simulation(HILS)と呼ばれる検証は部分的にあるいはシステム全体実機と組み合わせた検証を行い機器固有のタイミングの影響などを確認する非常に重要な検証です。
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