テレメトリ・コマンド自動生成システムについてお話しする前に、テレメトリとコマンドについてまずお話ししたいと思います。衛星を運用するために、テレメトリとコマンドはなくてはならないものです。
テレメトリとは人工衛星から地上運用局へ送信する衛星上で取得されたセンサデータやステータス情報のことです。
コマンドとは地上運用局から衛星へ送信する制御情報のことです。
例えば地上から衛星に、衛星についているカメラで「地球の写真を撮って!」という命令つまりコマンドを送ったとします。それに対して衛星から地上に、「撮った写真のデータだよ!」と送る応答(写真データ)がテレメトリです。
このテレメトリとコマンドは衛星を開発する際に決められます。衛星のミッションによってその内容は変わってきます。また、衛星開発中に「やっぱりこんなコマンドにしよう、テレメトリはこうしなくては」という具合にたくさんの追加変更がされます。従来の開発において、テレメトリとコマンドのプログラミングは全て人の手で書かれていたためこのような多くの追加・変更ももちろん全て人の手で行われてきました。膨大なデータを相手にするわけですからこの作業はヒューマンエラーを引き起こしやすく、非効率的です。
さらにテレメトリ・コマンドは人工衛星と地上運用局の双方が合うように作らなければならないため多くの検証プロセスが必要となります。
これらの問題を解決するために、木村研究室ではテレメトリ・コマンド自動生成システムを考案しました。このシステムは今まで人の手で行われたテレメトリ・コマンドのプログラム作成、編集・追加作業を自動で行ってしまおうというものです。まず開発者はドキュメント(例えば、エクセルなどのスプレッドシート)にテレメトリ・コマンドを定義します。あとはテレメトリ・コマンド変換ソフトウェアと地上運用システムデータベース変換ソフトウェアのそれぞれに通して自動的に衛星搭載ソフトウェアと地上運用データベースを生成することができます。この自動生成システムの開発により運用システムと衛星搭載ソフトウェアのテレメトリ・コマンドが一致することはもちろん、ヒューマンエラーの抑止と生産性を向上することができます。さらにテレメトリ・コマンドの定義書の形式に従って内容のみ書き換えることによって、様々な衛星開発に流用が可能です。本システムは2014年に打ち上げられた、文部科学省の「超小型衛星開発事業」における“UNIFORM-1”、内閣府の「最先端研究開発支援プログラム」における“ほどよし3号機”、“ほどよし4号機”、そしてはやぶさ2の相乗り衛星である東京大学の大学衛星“PROCYON”に適用されました。このようにシステムが繰り返し利用されることでシステムの信頼性の向上を期待することができます。
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