人工衛星のお世話をする軌道上保全システム

不要衛星除去のイメージ

故障衛星修理のイメージ

小さな衛星を用いた故障衛星の検査のイメージ

1957年にスプートニクが宇宙に飛び立って以来人工衛星の数は年々増え続けています。近年、通信放送衛星、気象衛星、

カーナビゲーションでおなじ みの測位システムそして宇宙ステーションと宇宙の利用が多様になり、イリジウムのようにたくさんの衛星で一つのシステムを構築する、コンステレーションシ ステムも広く利用されるようになるに従って、その増加のスピードは高まってきています。こうした中、宇宙でもゴミ問題が深刻になりつつあります。寿命のつ きた衛星や故障した衛星が他の衛星の脅威になりうるのです。こうした衛星が他の衛星と接触すると、(いえ異なる軌道で運動している物体はすさまじい相対速度をもっていますから接触というような生易しいものではありませんね、)大変な事態を引き起こす危険性があります。

現にこれまでにもいくつか宇宙のゴミが原因と見られる不具合が報告されています。また、衛星のような大きな物体で衝突が発生すると、さらに多くの破片をまき散らし、第二第三の衝突を引き起こす危険性も指摘されています。また、国内の某旅行会社さん(J○B)では宇宙旅行のサービスを受け付けています。まさに本格的な宇宙時代の到来というところですが、こうした宇宙のゴミ問題は、本格的な宇宙旅行を目前控えている現在より大きな問題としてとらえる必要があります。

これに対して、日本は宇宙ロボットや自律制御の分野で数多くの実績があり、世界的にも注目されています。1996年にはスペースシャトルで宇宙ステーションで用いるロボットアームの軌道上実証を行うManipulator Flight Demonstrationを実施しており、1997年に打ち上げられた技術試験衛星VII 型は世界唯一の無人環境での運用を実現したロボット衛星です。また、マイクロラブサット1号機では衛星への接近に必要となる画像処理技術や自律制御技術についての実験、先日小惑星イトカワへの着陸で話題になったハヤブサの自律制御技術も関連する技術として注目されます。

そこでこれらの技術を活用し、寿命のつきた衛星の除去や故障した衛星の検査や修理を実現することで、宇宙のゴミ問題を解決し宇宙システムの安全な運用を実 現するシステム、軌道上保全システム(Orbital Maintenance System:OMS)が提案されています。木村はこれまでこうしたシステムの構想に関する研究とともに、こうしたシステムを実現するために必要な要素技術の研究に携わってきました。